
2025年6月7日(土)、備前市美術館の完成見学会を開催しました。
当日は約800人の方がご来場くださいました。
たくさんのご来場ありがとうございました!
この記事では、見学会当日の様子を振り返りながら館内の魅力をご紹介します。

▼1Fエントランス

美術館に一歩足を踏み入れると、窓から明るい光が差し込む開放的なエントランスが広がります。備前焼の里・伊部のまちの賑わいと接しながらも、凛とした静けさが漂い、作品とゆっくり向き合うゆたかな時間を予感させます。



空間デザインのコンセプトは「風は風の教えるままに、石は石の語るままに」。
作品の美しさが際立つモノトーンを基調とし、階段や床材には瀬戸内の自然が育んだ自然石を使用しました。どれも美術館の設計者である、建築家・櫻井潔さんが自ら産地に足を運び選んだものです。
▼備前焼モニュメント《土と炎の記憶》

エントランス中央には、人間国宝・伊勢﨑淳さんによる備前焼のモニュメント。近くで見ると、一枚一枚が、備前焼の焼成に使う松のような意匠になっていることに気づくはず。
▼展示室1〜3(2F)

2階には3つの企画展示室があり、備前焼をはじめ、工芸、絵画、彫刻、デザインなど多彩な展覧会が予定されています。一部のスペースでは、焼き物の質感を直接楽しめるガラスケースのない展示も。
▼茶室(3F)

前身の備前焼ミュージアムにあった茶室「壺々庵(ここあん)」がリニューアルされ、美術館内に新たな姿で蘇りました。開館後には、誰でも気軽に参加できる「お茶会」を定期的に開催する予定です。
▼屋上庭園(3F)

茶室に隣接する屋上庭園に並ぶ景石は、瀬戸内海で採れた自然石(庵治石、与島石、白石島みかげ)から作られたもの。
▼ラウンジ(3F)

茶室の隣に位置するラウンジの窓からは、国史跡南大窯跡が望めます。
今後ソファーなどが入り、鑑賞後の休憩や、ちょっとしたイベントスペースにもご利用いただけるようになる予定です。
また、ラウンジの扉の取手は、前身の備前焼ミュージアムの入口で使用されていたもの。見学会中に気づかれて、「もしかして」と声をかけてくださる方も多くいらっしゃいました。
▼展示室0(1F)

さらに1Fにも展示スペースが。展示室0は、様々な美術・芸術活動の発表の場。展示移動壁で用途に合わせた展示が可能です。また、遮光ブラインドを調節すれば、窓から自然光を取り込んだ展示も可能です。
▼歴史展示室(1F)

歴史展示室では、館蔵品のほか、窯跡からの出土品や近代産業に関わる資料を展示し、備前焼の歴史を紹介します。
▼階段室

隠れたフォトスポット・階段室。スリットから差し込む光が美しく、見学会では時間をかけてじっくりと撮影する方を何人も見かけました。見上げると天井にもちょっとしたこだわりが。
▼ミュージアムショップ&カフェ(1F)

ミュージアムショップも絶賛準備中です。ここでは企画展の図録やグッズ、地域のプロダクトや書籍を販売します。また、カフェでは備前や岡山にゆかりあるこだわりのメニューを提供する予定です。市外から訪れた方々に、食を通じてまちを知ってもらうきっかけになればと考えています。
「ミュージアムショップ&カフェ」のある1Fは、誰でも入れる無料エリアなので、ぜひ気軽にお越しください。
▼エントランス オブジェ(第74回全国植樹祭 CLTゲート)

美術館の前には大きな六角形のオブジェも。これは岡山県産ヒノキCLTで制作されたもの。六角形は「亀甲模様」と呼ばれるように縁起が良いかたちの一つです。それを連続させることで永遠に続く繁栄を表現しています。天皇皇后両陛下のご臨席を仰ぎ開催した第74回全国植樹祭(2024年)の式典で発表されたものを、後世に引き継ぐレガシー(遺産)として美術館に移設しました。(制作:株式会社佐田建美)
会場ではこれからの備前市美術館についてのアンケートも実施。約60名の方々に回答をいただきました。また、新しい場を育んでいくためには、そこにどんな人々が集い、どんな営みが行われていくかがとても重要です。そこで、地域の皆様一人ひとりの声を伺いたく、こんな質問も入れさせていただきました。

この質問には特にたくさんの回答をいただきました。
1)まちに開かれた公園のような美術館であるために
・スタッフが居心地の良い雰囲気を作ること
・ワークショップなどの実施
2)共につくる参加交流型の美術館であるために
・備前市美術館ファンの集い
・地域の行事と連携した、人が巡回するような仕掛けやイベント
3)子どもたちと共に成長する美術館であるために
・子ども時代から感性を磨くのは大切。特に作家の卵が多い地域でもあるので
・学校の授業との連携、体験イベント
4)地域の文化を世界に開く美術館であるために
・備前焼文化の発信基地になる
・備前焼や歴史展示
5)世界の文化と共に生きる美術館であるために
・海外のアートの紹介
・海外の小中学生とZoomでつながり、お互いの地域のアートについて紹介しあう
・大都市の有名な展示には敵わない。ニッチだけど目の付け所がいい企画展で遠方の方にもアピールし、市内の備前焼関連施設もあわせて紹介し、「備前市のために一日使って来てくれる」複合起点として機能するようにする
備前に新たな文化芸術の風を吹き込み、備前焼をはじめとした地域の魅力を発信していくため、皆様のご意見やエールのもと、今後も心を込めて準備を進めていきたいと思います。
7月12日(土)のグランドオープンを楽しみにお待ちください。
撮影:小川雄大